特性・成分

「かぐら南蛮」とは、新潟県の山古志地域や魚沼地域で栽培されるきわめて独特な南蛮(とうがらし)で、肉厚で大型、さわやかな辛味が特徴です。
文献によれば江戸時代中ごろからこの地に根生え、中越地震後のふるさと再発見の取り組みの中で、長岡野菜の一つとして注目されるようになりました。辛味成分はカプサイシンで、温熱・発汗作用や痩身に良いと言われています。


かぐら南蛮が漬物になるまで

かぐら南蛮って何?

かぐら南蛮はトウガラシの一種のナス科の一年性植物で、初夏から星型の小さな白い花を付け出し、霜が降りるまでの間、収穫が続きます。連作で避地現象を生じて立ち枯れを起すことがありますが、通常は草勢強く、炎天に耐えて草丈が1m以上にもなります。ゴツゴツした果頂部は獅子かぐら面を連想させることからその名がついたと言われています。また、ピーマン型のトウガラシは、わが国では極めて珍しいとも言われまさに、地域限定の伝統野菜です。
 果皮色は緑色を主体に、10%程度の赤色の個体が混ざります。赤色果の発生は熟度との関係が考えられますが、そればかりではないらしく、赤色果の多い株と少ない株があって、加工用途に合わせて赤色果の多い株の系統選抜を繰り返して赤色果優勢株の固定を行っている地域もあります。
 栽培地域は新潟県内の上越市(牧)、魚沼地方、長岡市(山古志、栃尾)に限定され、伝統的特産野菜として大事に受け継がれています。  かぐら南蛮の辛味は独特で他のナンバンのような刺激的な辛味とは異なって、ジンワリと感じてくる厚みのあるマイルドな辛味が特長です。
 栽培地域では、赤色果だけを刻んで米麹と食塩を合わせ、一年かけて発酵させた発酵調味料や、味噌と炒めた南蛮味噌が昔から作られて、それぞれの地域の自慢の名産品として愛されています。 他にも醤油味のうま煮、つくだ煮、てんぷら、焼物、薬味など様々に食べられています。また、地域では「オニゴショウ」、「デンデコ」、「シシゴショウ」など別名でも呼ばれています。




〔カラスも食べるかぐら南蛮〕
カラスが南蛮を食べるって???そりゃウソでしょう・・・。
 ピーマン型のかぐら南蛮の果皮は肉厚で辛味の他に甘味のあるジューシーさが特長です。また、辛味成分の蓄積は果皮に比べ種子とその周辺部位が圧倒的です。  そして辛味の程度は平地栽培よりも山手の方がはるかに辛く、夏場よりも秋口にかけてだんだん強烈になります。よって、強い辛味の発生には魚沼米のおいしさ同様に、昼夜の温度差が関係しているようです。
ともあれ、カラスは辛味が増す前の果皮が甘いうちに上手に芯の部分を避けて食べているようです。また、その頃のかぐら南蛮のてんぷらは程よい辛さとジューシーな甘みですばらしい一品です。

〔盛勢な成長力のかぐら南蛮〕
小千谷市東山地区と長岡市山古志は隣接した地域で、両地域共に錦鯉の生産と闘牛(牛の角突き)が盛んな地で、シーズン中には全国、海外からの来訪者で賑わいます。しかし今年も積雪量4m余が示すように冬は冬眠状態−いや、雪堀(雪下し)に追い立てられながらの越冬となります。このような豪雪地の雪消えは5月にまでずれ込み、かぐら南蛮の定植も常識では考えられない6月という年も珍しくありません。
 よくしたもので、南米原産の南蛮だけに夏場の高温で一気に成長してくれて事なきを得ています。

〔好きこそものの・・・震災復興にも一役〕
生産者のひとりは社長業のかたわら、趣味が高じてかぐら南蛮5,000本の他、なす・体菜・野沢菜など畑作の魅力に取りつかれ、近隣の農家から一目を置かれた存在です。シーズン中は毎朝4時には畑に出て夜明けを待って作業にとりかかり、会社の始業まで作物の手入れに励み、夕方も終業後、暗くなるまでの熱の入れようです。
険しい山間の当地は、平成16年の新潟中越地震で壊滅的被害を受け全村避難となった地域です。当の社長さんも大量の土砂で家を失い、長岡市内の仮設住宅生活となってしまいました。そんな苦難の中にあっても野菜作りを諦められず、翌春には入村許可証の発行を申請し、余震が続く中、今度は仮設住宅からの畑通いが始まり、震災復興の灯にもなったのです。
このように未曾有の被害を受けながら今日まで一年も休まず畑作に取りつかれているさまは篤農の鏡と言えます。  当社にはこのような熱心な生産者の皆さまの“おかげ”に支えられて良質な原料野菜の手当てを実現しております。

(先頭へ戻る)